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トリミング

2025年の振り返り 〜父のこと〜

2025年は、私にとって大きな節目の年になりました。
父が亡くなった年です。

父は出雲市で、ぶどうの専業農家として働いていました。
とにかく休みなく畑に出ていた印象があります。
子どものころ、家族みんなでどこかへ遊びに行った記憶は、正直ほとんどありません。

家のことやぶどうの世話、家事全般を担っていたのは母でした。
父は家の中のことがあまり得意ではなく、洗い物や探し物はいつも母任せ。
口数は多いけれど、不器用な人だったのだと思います。

入学式や卒業式、授業参観など、父が学校行事に来た記憶はありません。
今思えば、それも父なりの距離感だったのかもしれません。

そんな父との思い出で、なぜか今もはっきり覚えている出来事が一つあります。
中学一年生のとき、兄の引っ越しを手伝うため、父と二人で軽トラックに乗り、広島まで往復しました。

リクライニングもしないシートで、長い道のり。
何を話せばいいのかわからず、車内はほとんど無言。
正直、少し気まずく、少し疲れる時間でした。

でもその途中、初めて父と二人きりで外食をしました。
頼んだのはカレー。
家ではいつもポークカレーだったので、外で食べたビーフカレーは、驚くほど新鮮でした。
今でも、あの味だけは妙に記憶に残っています。

父が最期を迎える直前、意識はほとんどありませんでした。
そのとき、母が父に向かって声をかけました。

「ありがとうって言え」

母が父に向けて、絞り出すように言った一言でした。
その言葉には、長い年月分の思いが詰まっていたように感じます。

父は多くを語る人ではありませんでした。
感謝を言葉にすることも、きっと得意ではなかったのでしょう。
それでも、母は最後に「言葉」を残そうとしたのだと思います。

父の人生が幸せだったかどうかは、正直わかりません。
でも、黙々と畑に向き合い続けた背中と、
その父を支え続けた母の強さは、今も心に残っています。

2025年は、別れを経験した一年でした。
同時に、「言葉にすることの大切さ」を、あらためて考えさせられた一年でもあります。
これからは、伝えられるうちに、伝えられる言葉を大切にしていきたい。
そんなことを思いながら、この一年を振り返っています。

K.F


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